第三編 顕彰譜

新年のご挨拶 新年のご挨拶

東京都世田谷区長 保坂 展人

 新年明けましておめでとうございます。

 皆様には、令和3年の新春を健やかに迎えられたこととお喜び申し上げます。

 令和2年の新春には、誰もが予想しなかった新型コロナウイルス感染症は感染が拡大し、今なお終結点が見えない渦中にあります。昨年11月の初旬には、世界中の累計感染者数は、5000万人を超え、死者も125万人を超えました。特に、ヨーロッパでは感染が再拡大し、10月にフランスで、11月にイングランドで厳しいロックダウン(都市封鎖)が行われています。日本でも、7・8月の第2波を迎え爆発的な感染は抑えられているものの11月に入ってからは全国の新規感染者数が過去最高を更新するなど、第3波の感染が広がっており鎮圧には至っていません。東京都において、世田谷区においても、連日、多数の感染者数の発表が続いています。こうした中で新型コロナウイルス対策が、当面の区政の優先課題です。区としては、感染拡大防止のための検査体制の充実と感染拡大防止、区民の生命と健康を守ることに加え、疲弊する区内経済を支え、困窮する方を支援することに全力で取り組んでまいります。
コロナ禍にあって、改めて強く大切と感じるのは、「平和の尊さ」です。
大変厳しい社会経済情勢が続く状況にあって、社会全体で協力して立ち向かっているのも、今日の平和で豊かな社会を築きあげられてきた、その『礎』に、第2次世界大戦で失われた、多くの若者たちの尊い犠牲があったからです。

 特に、70年余前、戦禍激しい絶望的な中で、平和な世を願い、そしてご家族や親しい方を想いつつ、命を散らした特攻隊員の皆様方の存在を忘れてはなりません。

 昨年の第69回の年次法要は、新型コロナウイルス感染症感染拡大のため参列がかないませんでしたので、メッセージを送らせていただきました。この中で、知覧特攻平和会館に収蔵され南九州市教育委員会に文化財指定されている特攻隊員の手紙から、昭和二十年四月に知覧より出撃し戦死された、穴澤利夫さんが、婚約者にあてた最後の手紙の一節をご紹介しました。特攻隊員としての使命感と心を寄せる女性への思いがひしひしと伝わり、幸せな家庭を築き、夢と希望を抱いていた若者の心情を察すると、悲しみに胸が締め付けられる思いがいたしました。改めて命と平和の尊さに思いを馳せ、犠牲となられた皆様への哀悼の誠を捧げるものです。

 わが国は戦後70年以上に渡り世界中のどの国とも1度も戦火を交えることなく、平和の歴史を積み重ねてまいりました。
遠ざかる歴史の中で、その教訓を後世に伝えてきた皆様をはじめ、先人のご努力あってこそのことと存じます。新型コロナウイルスの後の社会に向けて、平和への思いを、皆様とともに若い世代にしっかりと伝えてまいりたいと思います。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。