東京都世田谷区長
保坂展人
新年明けましておめでとうございます。
皆様には、令和4年の新春を健やかに迎えられたこととお喜び申し上げます。
令和2年の新春から感染が拡大した新型コロナウイルス感染症は、昨年夏の第5波では、世田谷区でも検査陽性者数は、一時一日400人を超え、在宅で療養される方が約3,500人と危機的な事態となりました。医療関係者の懸命な努力もあって、8月下旬から感染はピークアウトし、東京都においても「緊急事態宣言」が解除され、社会経済活動も次第と活発になってきています。他方で世界に目を転じてみれば、流行は周期的な波形を描いており、ワクチン接種が進んでいる国や、感染者数の増加を抑えていた国においても、再び飲食店の営業時間の制限などの厳しい措置が取られています。
世田谷区でも8割を超えるワクチン接種が進んでいますが、2回接種後のブレイクスルー感染も報告されています。今後、流行が懸念されるインフルエンザ対策も含め専門家の助言も得て、第5波の教訓を活かして、すべての検査陽性者に「診断と治療」が可能となる体制を、医療関係者と世田谷区が機敏で緻密に連携して構築していきます。
この間のコロナ禍にあって、改めて強く大切と感じるのは、「平和の尊さ」です。社会経済情勢の先行きが見えづらく不透明が続く状況にあって、今日の平和で豊かな社会を築きあげられてきた、そ
の『礎』に、第2次世界大戦で失われた、多くの若者たちの尊い犠牲があったからです。特に、70年余前、戦禍激しい絶望的な中で、平和な世を願い、そしてご家族や親しい方を想いつつ、命を散らした
特攻隊員の皆様方の存在を忘れてはなりません。
昨年の第70回の年次法要も、新型コロナウイルス感染症感染拡大のため、一昨年に続き参列がかないませんでしたので、メッセージを送らせていただきました。
この中で、宮本雅史さんが平成17年に書かれた『「特攻」と遺族の戦後』の本から、小学校で同級生であった林義則さんと小栗楓さんの出征が決まってから出撃までの手紙のやり取りをご紹介しました。
昭和20年4月に知覧より出撃し戦死された林義則さんの戦死公報が10月に届き、村役場の職員であった小栗楓さんが自分の手で義則さんの戸籍を抹消します。手が震えたそうです。「まさか、あの人の
戸籍を自分の手で抹消するとは…。末期の水を取ってあげる気持ちでした」と。
運命は残酷なものです。思いを通わせながら添い遂げることができなかったお2人のお気持ちを察すると胸が締め付けられる思いです。
わが国は戦後70年以上に渡り世界中のどの国とも一度も戦火を交えることなく、平和の歴史を積み重ねてまいりました。
遠ざかる歴史の中で、その教訓を後世に伝えてきた皆様をはじめ、先人のご努力あってのことと存じます。新型コロナウイルスの後の社会に向けて、平和の大切さを、皆様とともに次の世代にしっかり
と伝えてまいりたいと思います。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。