第三編 顕彰譜

特攻平和観音経 特攻平和観音経

恭しく伏して惟んみるに、天地開闢依頼、この世に生を享けしもの、幾十百千万億兆なるを知らず。
その間、同種相集い、同属相結んで国をなし、互に境を劃し、相互反目反噬土してその国土の拡延を図り争奪して止まざること百千万刧なり。
就中、中世以降、西欧の諸列強は、善良盲昧の後進諸国を併呑し、もろもろの種族を圧伏して殖民の苦を与え、その野望の楽を取りぬ。世界の旧秩序即ち是れなり。
我が邦は、、古来平和を以て八紘為宇の大理想となし、万邦融合の大理念を掲ぐること、ここに三千年、昭和の聖代に至り、世界に一大新秩序を齎らさんことを庶幾し遂に曠古の大戦となる。
一億同心。討ちてし止まんの豪気蕩々、挙国戦務を努むるも、奈何せん、彼我の戦力隔絶し、戦勢日に非にして、大事将に去らんとす。
茲に忠勇無双の紅顔の烈士、自奮自励、九死に一生を期せず、特攻以て敵機、敵艦船を求めてこれを屠り、敵陣営の胆を奪う。その挙の壮烈にして、その果の偉大なる、全世界の瞠目するところなりき、然りといえども、遂に惨絶の敗戦に会す。我が邦無前の苦艱、ああやんぬる哉。
特攻烈士の挺身殉国の衷情を忖度すれば、人皆言辞を嚥み、熱涙胸宇に充つ。
それ人身は享け難く、その生を終るや難し。
前漢の大史公司馬遷にこれを聞く「人固より一死あり。死或は泰山よりも重く、或は鴻毛よりも軽し。これを用うるに趣くところ異なるなり」と。
特攻勇士の諸霊は正に忠烈の亀鑑なり。諸霊が父母の恩愛を断ち、 大忠、大孝、大義、大勇に徹せし崇高無比なる境涯に想到せんか誰れか万斛の涙なきを得んや。

 

老いも若きも泣き
男も女も哭き
草も木も、馬も羊も涙せん
玉も磚も悉く悲しまん
天地万象凡て慟きて止まざらん

 

唯、諸霊を慰め得るもの一つあり。宇内に無慮一百三十有余の独立国家の新秩序の出現これなり。真に世紀の偉業。この赫然たるに匹儔するもの果して他にあらんや。
これ正に諸霊の志の顕現なり。諸霊の血の発露なり。諸霊や、大仁にして大徳、大勇にして大善なり。故に諸士の霊徳や無量なり。諸士の光顔や巍々たり。
諸士の威神や無極なり。
その威徳は日月と燿を争い、その勲績は末代水世に亘りて宇内に広宣流布せられんこと豈疑を容るるの餘地あらんや。
嗚呼尊い哉 嗚呼仰がん哉 長存不滅の光
南無特攻平和観世音菩薩
南無特攻平和観世音菩薩
南無特攻平和観世音菩薩

 

註、特攻平和観音経は昭和26年5月23日に世田谷山観音寺を開山した太田睦賢師(昭和30年5月24日遷化)が作成された。

 

編集委員(初版)
平成二年三月二十五日発行
担当副会長 寺崎隆治 秋山紋次郎
総括    鈴木瞭五郎 田中賢一
生田 惇
陸海軍航空 鈴木瞭五郎 生田 惇
菱沼俊雄  佐藤彰平
和田 寛  岩田辰夫
程田 博  水野 帝
川北 等  石川二郎
佐藤修一
特殊潜航艇 花田賢司 松井明俊
回天    小灘利春 山田達雄
河崎春美
空挺    田中賢一 辻田信秋
戦車    鹿江武平
震洋    上田恵之助 野崎慶三
海上挺進隊 斉藤義雄 皆本義博
故 吉田浩次
海龍    久良知 滋
伏龍    海老沢喜佐雄 門奈鷹一郎
事務局   最上貞雄